受講生の声
野村優夫さん
浦山絵里さん
Q
はじめに、ワークショップデザイナー育成プログラムに応募したきっかけを教えてください。
A
報道の仕事に携わっていると、いろいろな「社会問題」の現場に行くことがあります。そうすると、地域社会とかコミュニケーションの問題が根っこにあるのではないかと思える事象に直面することがすごく多いんです。例えば、母親が子どもを殺してしまうだとか、職場でいじめが起こるだとか、新人の看護師が一年で1割以上やめてしまうとか。その様な問題を取材していると、もちろんそれぞれ固有の問題があるし、その人の俗人的な問題もあるんだけれど、根底にコミュ二ケーションの問題、それを育んでいる地域社会の問題、その人が育てられる環境の問題、そういったものが横たわっていることが多くて、そこをきちんと手当てしないといけないのではないかと。そこで、コミュニケーションとか地域社会の再生についての勉強をしたいなと思って、大阪大学コミュニケーションデザインセンターで2008年の夏から学び始めました。
その中で、このWSDの講座があるということを知りました。「参加型」、「地域再生」や「コミュニケーション」、そういうことがキーワードになっていましたし、講師の中に平田オリザさんもいるから、どういうことをやるのかなあと思いまして。当初は、ワークショップそのものに直接興味があったわけではないんですが、キーワードに惹かれて、その理論と実践をちょっと覗いてみたいなあ、というのがきっかけになりました。
Q
実際の講座の様子を教えてください。
A
正直なことを言うと、僕にとっては玉石混交でした。平田オリザさんや岩下徹さんの講座には、ものすごく強烈なインパクトがあって影響を受けました。何故だろう思ったんですけれど、やっぱりワークショップって「人」だなあ、って感じがすごくしたんですね。その人に接するだけで、何か「感染する」ような状況になる。「何かよく分からないんだけれども、平田さんてすごいな」って。あの人は、立ち振る舞いや物言いは、高圧的でもないし、特別難しいことを言うわけでもないんだけれど、穏やかな中に、「ただもんじゃないぞ」という、刃みたいなものを時々見せる。岩下さんにしても、独特のオーラによってだんだん現実との境が分からなるような感覚を与えてくる。そうしたものに、ぱっと感染して、この人の言うことを深く聞いてみようとか、このプログラムに乗っかってみようとか、この人が喋っていることってどういう意味なんだろう?ということを考えさせられたんですね。そういう「感染力」を与えてくれるワークショップは、僕にとってはすごく意味があったし、授業としてもすごく大きな学びがあったと思います。
逆に、プログラムだけが先行していて、「この課題は、こういうことを学ばせるためにやるのだ」と頭でっかちになっていてファシリテーターの魅力に欠けるワークショップも見られました。もしくは「自由にしていいですよ」と、全くファシリテーターがノータッチになっているワークショップがある。これらは、僕にとってはあまりピンとこないものでした。そもそも、全ての人に有効なワークショップなんてないので、あくまでも僕の感想ですが。
本当に色々なワークショップがあって、例えば、あくまでも参加者が主役で、ファシリテーターは黒子なんです、という考え方のワークショップが成立する場合があることも承知しています。その上で言うんですが、そういうワークショップよりも、強烈な個性のある人に感染して、そこに巻き込まれながら、自分で主体的に考える環境をつくってくれるワークショップに、大人も子どもも、すごく影響を受けるのではないかと。それが10年後20年後にも残る「何か」を参加者の中に植え付けてくれるのではないのかなあと。結局、「ワークショップ的志向のある人」がいる場そのものが、ワークショップになっていくのではないか、というのが授業を通じて感じたことです。
Q
プログラムの中のe—ラーニングでの学習はどうでしたか?
A
やはり平田さんには映像で見てもひきつけられるものがあったし、佐伯さんの話にも引き込まれるものがあって、結果その言葉一つ一つについて深く考えさせられました。e-ラーニングは、双方向形式ではなく、いわゆる授業形式ですよね。だけど、一種の「感染」を受けました。ということは、果たして、形式としての「自主的な参加・双方向」ということがワークショップの必須条件なのだろうか、ということも考えさせられました。
一方で、e-ラーニングの設計については、もう少しやりようがあるのでは?とも思いました。双方向という点で言えば、課題の途中で受講生が感想や意見を書いて、それに対するリアクションが事務局側からあって、一〜二往復ぐらいしないと次に進めない、というような形にすれば、ワークショップっぽくなりますよね。
その延長線でいうと、途中からWSDの受講生同士が集まって、皆でe-ラーニングを見はじめたんです。みんなで先生に突っ込むんです!すごくワークショップ的でしょ?考え付いたU君に感謝です。「自分で考える」ことは必要だなと、それはe-ラーニングに限らずすごく思いました。
Q
今後どのように活かしていけそうですか?
A
ひとつは、放送に携わっているので、学校教育の教材を作ってみたいです。「地域社会」や「コミュニケーション」について考えるヒントになるような、正解を与える形式ではない、まさにひとつのワークショップ的な場になるような、投げかけができる番組を作って放送して、それを教材化したいです。あと、今回いろいろな人たちと仲良くなれたので、ネットワークを組んで、例えば大阪のどこかの地域に実際に参画して、新しい地域社会の在り方みたいなものをどうやったら再構築できるかを、色んな人が持っているリソースを使いながら探ってみたいです。それをできれば、また番組にして、放送に返していくような発展性が見込めたら…と思います。
Q
最後に受講を考えている皆さんに一言お願いします。
A
もし受講するなら、自分で考える姿勢がなければダメだと思います。
ワークショップはファジーなものだし、完成形なんて当然あるはずもないので、いろんな人がいろいろな理屈を考えながらやっているわけで、それを「教える」ということ自体、よく考えると無理がある。だけど、掲げている理念や方向性は今の社会の中で必要なものだと思うし、実際に成功している例を授業で垣間見ることができます。
ただ、いわゆる一般の授業ように、教室にいれば何かを教えてもらえるものだと受身の姿勢でいると、何も得られずに終わってしまう。だから、講義の中身についても、受講生側からつっこんでいったらいい。e-ラーニングもつまらないと思えば、自分達でやり方を工夫してみたらいい。WSDの運営の仕方自体に文句があるのなら、その都度言ったらいいと思います。あと、自分が授業から受けとったものを皆で一緒に話し合うことで、考えが深まるということがありました。僕は、授業の後、ほぼ毎回誰かと食事に行って、その日の振りかえりをしました。ポジティブに自分で何か取りにいこうとすれば、工夫とめぐり合わせによっては、すごくいい場が持てる可能性がある。少なくとも僕はそれが持てたという実感があります。
その気概がある人なら、チャレンジして欲しいと思います。